階層性
部下を従わせるには二つのやり方があります。
① 一つは職位のヒエラルキーを誇示して仕事を強制するやり方
② もう一つは、上司自ら部下の仕事を高いクオリティでやって見せるやり方。
どちらでも部下は仕事をします。まともな人間であれば。
しかし、部下がやる気になるのは後者②です。上司に仕事の理想を見せられると、そのクオリティを追いかけて自主的に仕事をするようになります。部下の成長も早いです。①に比べると雲泥の差があります。
部下と上司の住む世界は異なります。部下から上司は見えないのです。上司からしたら、「1+1=2」のように当たり前のことも部下にはわかりません。そもそも同じ問いを共有しているという感覚が全くないのですから。
情報空間には非常に厳しい階層性があります。
上から下は見えるけれど、下から上は全く見えません。自分より上は理解できないのです。
理解できているように感じられても、間違いなく錯覚です。
考えてみれば、残酷な話ではあります。しかし、やむをえないことです。
②上司が部下の仕事を高いクオリティでやって見せたとき、部下は初めて上司のことが見えるようになります。上司の高い能力を(たぶん部下より高い能力を)理解し、フォロワーシップが生まれます。組織に血が通います。
人を導く立場になったら、下から上は全く見えないことを肝に銘じる必要があります。
『見えない』のです。
一旦下に降りて、下で見本を見せてやらなければ、下の人間は理解できないのです。
有名な山本五十六の言葉に、
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
というのがありますが、
これは情報空間での階層性のことを言っているように私には思えます。